八王子市立中野児童館 見学会報告
小型児童館における中高生の活動 〜10年間の実践の中からのアプローチ〜
中野児童館長の井垣さんは、児童館現場から異動し、本庁で児童館を管理するポジションを2年程担当していた。「どう今の児童館を変えて行くか」ということに取り組んでいた。その後、児童館現場に戻り、それから7年間、中野児童館で働いている。中高生対応についてその経緯や実際のポイントについてレポートしていただいた。
(当時の状況)
地域の大人からは「中高生がよく解らない」という声があがっていた。当時の大人から見た中高生のイメージは以下の通り。
・中高生が「公園でたむろしている」「部活とかバイトとかで忙しそう」「中高生に声をかけるのは怖い」
また、児童館は小学生の行くところとの認識が多かった。
(課題)
「そもそも中高生が児童館なんか行くのか?」→「小学生を対応していた児童館が、どうやったら中高生の居場所をつくれるのだろう?」
(手立て)
第一のステップは、「中高生のキーワード、問題等を知ること」
○中高生に関するキーワード探し
「ひきこもり」「ニート」「子どもの貧困」「ネット依存 (特にスマホの依存率は高い)」「学校裏サイト」「ネット依存」「社会参加」「意見表明」「社会参加」「意見表明」「不登校」
(具体的取組み)
○「八王子市子ども支援研究会」の設置
以下を目的と取り組みとした。
・職員の意識改革
・変化する社会情勢の中での児童館を理解すること
・思春期の子どもの発達の理解と職員のスキルアップ研修の実施
・専門職を新たに採用するのではなく、自らが専門的な知識をもつことを目標に研鑽する。
・児童館の職員が子ども達の問題を全部担える訳ではない。適切な専門機関につなげる。
○八王子オリジナルの中高生事業の展開
〜小型児童館だからできること!マイナスだから+に〜
大きな設備や部屋もなく、改修をして設置したり、新しい中高生対応の児童センターを設置したりするのではなく、地域にある小型児童館のまま、中高生事業を展開するには、八王子オリジナル(「出張児童館の展開」「地域との協働とワークの構築」「個別の子どもの支援の強化」)がポイントにした。
・八王子市には 小学校 70校、中学校 38校、児童館 10+2(分館)の設置
(H27.4.1現在)
・広域の市内を5つのブロックに分けて、2つの児童館でその地域の事業展開をしている。
・ひとつの児童館で7校程度の小学校と3~4校の中学校を担当している。
・児童館を利用する中高生だけではなく八王子全体の中高生を対象にしている。
○まず、児童館が本気で、高校生が利用でき、中高生の居場所づくりの取り組んでいることを地域にアピールした。
・全小学校、中学校に出向いて児童館の周知を図るプレゼンを行った。
・地域住民は中高生がよく解らない。地域住民に対して研修として、児童館の見学日を設ける。地域の人に中高生を見てもらおうという取り組みを始める。
○地域の人と関わりを増やす
・ボランティアの受け入れ ・地域住民と共同にイベントを開催(例:日常の事業の協力、おまつりなど)
・地域住民に来館してもらい、子どもたちにさまざまなことを教えてもらう
(例:日常の事業の協力)
○学校との連携
・出張事業の強化
・学校と積極的に連携をとる。
○相談事業の充実
・ネットワークをしっかり張る。
・相談機能を充実
・職員が共通認識を持ち、学校の情報や状況、地域の状況、高校等の特徴などの情報収集、把握し記録。
○職員
・今まで児童館長が配していなかった。しかし地域と連携の充実のために児童館長を設置することになった。
・児童館のシフトはひとつ、遅番早番などはなし。
・3~4人のスタッフで運営。
○中野児童館の利用者の割合(H26年度のデーター)
・中野児童館は八王子市の児童館の中で2番目に利用者が少ない。
・一日平均80人程度。団地の建替えもあり、最近は利用者も減ったとのこと。
・中学生が15%、高校生6% ・中学生は8月の利用が多い。小学生は8月の利用が少ない。小学生が多いと中学生が少ない。部屋の棲み分けをして工夫をしている。
・中野児童館は市内の児童館の中でも中学生の利用率が高い。
・中野の一番の特徴が相談事業。年間295件の相談対応。中野は他の児童館にくらべて特に中高生の相談が多い。
○中高生との関わり方
・職員と中高生の個別のかかわりを大事にしている。
・ルールを変更する時には、必ず中高生から聞き取りをしている。
・中高生は小学生に教えるのが好きなことを最大に活かしている。
・中高生が来館した時には絶対に声をかける。
・大人のスタッフがいるのがあたりまえ、中高生の言う「うざい」のがあたりまえ、だと思ってもらう。
・時には、何もしないのも必要。ただ何故そうしているかと明確にするのが大事に考えている。
・中高生に大人の都合の一般論で押し切らない。職員ひとりひとりに考えさせる。これを職員意識として共有している。
・「職員の5つモットー」(「笑顔の対応」「冷静に!」「清潔に!」「整理整頓から」「声を掛け合って」)を掲げて職員の共通意識にしている。
・近くの小学校と中学校に特別支援学級がある。そこに通っている子どもが利用する際に、ルールなど理解して利用してもらうために工夫として表示を充実させた。
○中高生の事業展開において意識しているポイント
・遊びから発展した事業であること ・体験活動を通した自己実現を可能にできること
・地域と結びつけるしかけがあること。
・ボードゲームなどのメリットはコミュニケーションのきっかけになる(教え合う、助けあう、上達する)
・異年齢の交流の場を設ける(中学生が小学生に教える)
・中学生が主体性をもって実現する場を設ける(例:中学生が教える科学実験、ボードゲーム体験広場)
・日常の中にイベントを仕かける。日常を大事にする。
・食べることを大事にしている。それが交流につながる。しっかり食事をとっていない子が多い。
○地域に出ていく出前児童館事業の対応
・待つだけでなく、こちらから出向く
・出張事業の拡大(市民センター、中学校で出前児童館を実施)
・中高生が児童館に来館しなくても、児童館に関われる環境を整える。
・学校との関わりは難しい。そのために学校がほしがっている情報を適宜提供している。
・学校や地域との連携 情報の発信とともに地域の情報を収集する。
・地域との関わりが難しいと感じたら、地域住民が何を求めているかを探り、それを実現していく。
・とにかく、さまざまな場面で関わっていく。団地の中にある商店を利用するなど。
そういった方々が子どもたちの情報を持っていたりする。
・児童館の部屋を使って相談員がさまざまな相談に対応している。
○児童館における中学生・高校生年齢の特性と情報発信
・児童館が中高生たちの居場所になるために児童館の特性を周知していかないといけない。
・0~18歳まで切れ目のない支援をできているのは児童館だけという意識を持ち、地域の子ども達が、幼児から中高生まで育っていくのをしっかりと見守る。
・18才でその子との縁が終わる訳ではない。その後は地域の協力者に変わる。
その子が子どもを産み、今度は子どもが利用者になるというサイクルが続いていく。
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